EVのリセールバリューはどう変化する?

バッテリー性能の劣化と再販価格の関係

EV(電気自動車)のリセールバリューに最も大きな影響を与えるのが、バッテリーの劣化です。リチウムイオン電池は充放電を繰り返すことで徐々に性能が落ち、航続距離の低下や充電時間の延長といった実用面での影響が現れます。これにより、中古市場ではバッテリー状態が判断材料となり、購入者の不安要素として価格を下げる要因になっています。

例えば、「例えば、日産リーフのような代表的なEVでは、3年後で残存価値が約36%、7年後で約10%程度となっています。初期のEVにおいては、「バッテリーがどの程度劣化しているかが分かりにくい」という構造的な問題がありましたが、現在では多くの車種でバッテリーの状態を示す情報(SOH: State of Healthなど)がメーターや専用アプリで確認できるようになっています。

こうした課題に対しては、専用のバッテリー診断ツールの開発も進んでいます。最近では、急速充電ポートに接続するだけでバッテリーの劣化度合いを測定できる機器も登場し、中古EVの状態をより明確に把握できる環境が整いつつあります。

技術進化と政策がもたらす市場の変化

EVは日々技術が進化しており、新型モデルが登場するたびに航続距離や充電性能、安全性が向上しています。この進化の早さが、中古車市場において旧型モデルの評価を押し下げる傾向につながっています。数年落ちのEVが「性能面で見劣りする」と見なされることが、中古価格を押し下げる理由の一つです。

一方で、政策面では追い風も見られます。例えば日本では2035年までに乗用車の新車販売をすべて電動車(EV、FCV、PHV、HV)にするという目標が掲げられています。この政策はガソリン車の廃止を含むものです。

この流れを受けて、充電インフラの整備や補助金制度の拡充が進めば、中古EVの需要も徐々に安定していくでしょう。

また、メーカー自身がリユースや再販を想定した設計やサポート体制を強化していることも重要な変化です。ソフトウェアアップデート対応やバッテリー保証制度など、再販後も安心して乗れる体制が整えば、中古市場での価値も見直されるでしょう。

消費者の印象がリセールバリューに影響する

EVの中古車市場において、消費者の心理も価格に大きく関わります。バッテリーの劣化や充電の手間に対する不安、充電スポットの不足といったネガティブな印象が、中古EVの購入を躊躇させる要因になっています。これは実際の性能とは別に、イメージによって価格が下がる一因です。

しかし近年では、電気代の安さや災害時の非常用電源としての機能など、EVの実用性が見直されつつあります。再エネの普及や環境意識の高まりによって「EVに乗ること自体が選ばれる価値」になる時代も近づいていると言えるでしょう。

こうした消費者意識の変化に合わせて、バッテリー性能の可視化や保証制度の整備が進めば、中古EVに対する見方も変わり、リセールバリューの改善につながると考えられます。