トヨタ・ホンダ・日産、それぞれのEV戦略
トヨタは『全方位戦略』を掲げ、EVだけでなくハイブリッドや燃料電池車(FCV)なども展開しています。2026年までに10車種の新型EVを投入する方針で、当初は年間150万台の販売を目標としていましたが、直近の報道では100万台規模へ見直す動きが伝えられました。長期的には2030年までにEVを30車種に拡充し、年間350万台以上の販売を目指す計画を維持しています。現時点でのBEV(バッテリー式電気自動車)の販売比率はまだ低いものの、今後の展開に注目が集まっています。
ホンダは2021年度から2030年度までの10年間で、電動化とソフトウェア領域に約10兆円を投資する計画を発表。内訳は、車載電池に2兆円、ソフトウェア開発に2兆円、そして次世代のEV専用工場や金型投資を含む生産領域全体に6兆円が充てられるとしています。また、2040年には新車販売のすべてをEVまたはFCVとする方針を掲げており、グローバルでの体制整備が進められているようです。
日産は長期ビジョン『Nissan Ambition 2030』のもと、2030年度までに15車種のEVを含む23車種の電動車を市場に投入する方針です。さらに、全固体電池(ASSB)の研究開発にも注力しており、2024年度に試作ラインを設け、2028年度までの実用化を見込んでいます。英国に設けた生産拠点「EV36Zero」をはじめ、地域ごとに分散したEV供給体制の構築も進んでいます。
巨額投資と生産体制の構築
ホンダは、電動化とソフトウェア分野における約10兆円の投資計画のなかで、EVに対応した次世代工場の整備やバリューチェーン構築にも注力。現在、北米や日本市場を軸に、EVの量産体制が段階的に整えられています。米国でのハイブリッド車の販売が好調で、その利益を電動化領域の開発費に充てる戦略も明確です。
日産は、次世代電池である全固体電池を技術面での差別化要素として捉えており、開発を加速。この電池は、エネルギー密度が高く、充電時間の短縮や安全性向上が期待されており、将来的なEV普及を支える重要な技術とされています。各社の投資は単なる販売目標の達成だけでなく、中長期的な技術優位性を見据えた動きと言えるでしょう。
共通する課題と市場ごとの対応
最大の課題は、中国市場での競争激化です。BYDなどの中国新興メーカーが急成長を遂げるなか、日本メーカーはシェアの維持に苦戦しており、現地のニーズを意識した製品開発や価格政策の見直しが求められています。トヨタや日産は、地域ごとの特性に合わせたEV展開の戦略を進めている段階です。
もう一つの共通課題は、充電インフラや電力供給体制との連携です。EVの普及拡大には、ユーザーが日常的に使いやすい環境の整備が不可欠。加えて、各社ともカーボンニュートラルに向けた取り組みの一環として、再生可能エネルギーの活用や生産工程の脱炭素化も視野に入れています。
それぞれのメーカーが異なる強みと方向性で戦略を描きながらも、「技術革新」「柔軟な市場対応」「企業間連携」は共通のキーワードです。今後のグローバル競争を勝ち抜くうえで、日本の自動車メーカーがどのように電動化を実装していくかが問われています。