2035年EV化法案とは?
2035年EV化法案とは、2035年より後に生産される自動車については、二酸化炭素の排出が実質的にゼロとなるものとしなければならないという方針です。
2021年7月に、EUの中核となる欧州委員会が「気候変動対策に関する包括的な法案の政策文書」という形で発表した内容に基づいています。
EUでは、日本と同じように新車を販売するに当たっては関係当局に型式登録しないといけないのですが、その際に二酸化炭素を出さない、いわゆるゼロエミッションカーでないと認可を出さないという形にするとしたのです。
この政策文書は2022年10月に最終合意にいたり、2023年2月には欧州議会で採択されることによって法案として誕生しました。
法案に適合した基準を満たせる車の種類としては、EVつまり完全電気自動車とFCVつまり水素などを燃料とする燃料電池車があります。
しかし、ヨーロッパでは水素カーの開発はあまり進んでいませんので、実質的にはEVをメインとして普及させることを念頭に置いています。
これは、事実上ガソリン車の生産ができなくなることを意味しています。
もちろん、燃費は良くなるにしてもガソリンを使用するハイブリッド車についても同様です。
こうした規制を設けることで、少なくても自動車から排出される二酸化炭素をゼロにすることによって、全体の二酸化炭素の排出を抑えようとする狙いがあります。
ドイツなどが不支持にまわることになった
上記のように欧州議会での採択まで進んだ法案だったのですが、2023年3月になって事態が大きく動きます。
というのも、3月7日に法案の最終決定をする閣僚理事会が開催される予定だったのですが、ドイツの意見によって延期されてしまったからです。
ドイツは、すでに提出されていた法案を支持しないと表明したことから、実質的に閣僚会議を開いても合意に至らないことが明白になりました。
不支持を表明した際に、ドイツはe-fuelという内燃機関を持つ構造の自動車も認可されるようにしないと法案を支持しないと付け加えています。
このe-fuelとは、水素を含んだ合成燃料のことを指します。
燃焼を伴う動力源ですので、利用時には二酸化炭素を排出します。
しかし、再生可能エネルギーを使った水素を使うことによって製造過程で二酸化炭素を消費します。
そのため、トータルで見ると実質的にはゼロエミッションになると考えられている燃料です。
こうした不支持表明に対して、他の国も従うことになり法案は否決されることがほぼ確実となっています。
これからは、法案を修正して完全EVだけでなく、e-fuelも含めた代替案も加えた形で新しい法案が作られることが考えられます。